君が恋に落ちるまで。
”帰る”と言って教室を出て
授業へ向かう生徒とは逆方向へと
足を進めていった。
何も考えずに、ただひたすら
”何も考えないでいいように”
人を避けて、曇った空の下を
歩いていた。
「 ・・・瑞穂? 」
道を間違えたか、と
零れかけた溜息。
「 これ、ありがとうございました 」
来た道を戻ろうとして
思い出したのはハンカチだった。
慧に会ったときに渡さなきゃ、と
思っていたものの、実際会うと
ハンカチのことなんて忘れて
ただ逃げることだけを考えていた。
「 え?あ、いえいえ! 」
彼女と目が合って、軽く会釈をして、
ハンカチを返してすぐに気付いた。
・・・戻るタイミングが分からない。
「 じゃあ、行くね 」
「 気をつけて行けよ 」
有名な女子高の制服を着た彼女が
慧に手を振って駅の方へと去っていった。