君が恋に落ちるまで。
「 ごめんね、慧くん。
瑞穂ちゃんはもう、俺のだから 」
温かい腕に包まれて
あたしはぎゅっ、と
目の前の服を掴んだ。
「 ・・・は?何言って・・・ 」
「 これも、お返しするね 」
悠也さんが慧の手に
時計を落として、微笑んだ。
「 瑞穂・・・お前・・・ッ!! 」
「 慧くん、違うよ 」
「 ぁあ? 」
悠也さんは相変わらず
優しい口調で、
だけど酷く低い声で、
「 俺が君から奪ったんだよ。
”彼女”のように、ね? 」
後ろに止まっていた車に
押し込まれるようにして
乗って、ドアが閉まって
すぐに隣に悠也さんが乗り込んできた。