ヒコーキ雲に乗って
「そういや、もうすぐ夏休みやな。」

“アジア経済の危機”と書かれた分厚い本を手に取りながら、陽介が言った。

「そやね。その前に試験あるけど。」

“成長するアジア”という本に目を通しながら、私が答える。


「夏と言えば、キャンプやんな。」

「あーキャンプかぁ。いいなぁ。」

そう適当に答えたその時、陽介が突然私の肩を強く掴んだ。


「へ!?何!?」
「さすが香澄!お前ならキャンプの良さをわかってくれると信じてた!よし!そうと決まれば来週のゼミでみんなに提案やな!」


「は!!!?」

わけがわからず、大声を出した私の方を見て、司書さんが一つ咳払いをした。


「ちょっと、みんなに提案てどういう事?」

司書さんに注意を払いながら、小声で陽介に尋ねる。

「どうもこうもないでしょ。第一回荻原ゼミ、真夏のキャンプ大会開催や。」


そう言いながら、陽介は私に悪戯っ子の様な笑顔を残し、その場を去って行った。


残された私は、アウトドアが大の苦手な事を思い出しながらも、仲間とキャンプといういかにも青春ぽい響きに悪い気はしなかった。

そして、キャンプ場で子供みたいに大ハシャギして笑う陽介を想像し、少し笑ってしまった。
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