ヒコーキ雲に乗って

我ながら晴れ女だとつくづく思う。

小学生の時から遠足や、修学旅行、体育祭などの行事ごとで雨に見舞われた事が、記憶してる限りでは一度もない。


ゼミ生全員が心待ちにしていたこの日も、嘘みたいに綺麗に晴れた。



「俺ってやっぱすごいな。」

待ち合わせ場所の大きな交差点で、車に荷物を積みながら陽介が呟いた。

「何が?」

尋ねると、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりのニヤけ面で、陽介がこちらを振り向く。

「俺、ほんまにびっくりするぐらい晴れ男。見てみろこの空の青さ!!テンションめちゃくちゃ上がるよな!」

同じ事を考えていた事と、陽介のあまりにも嬉しそうな表情が可笑しくて、思わず噴出してしまった。

「なんや!?何が面白いねん!あ!そっか、香澄も嬉しいんやな。この青空が。そうかそうか。」


ひとりで勝手に納得する姿が更に面白くて、ついには大笑いしてしまった。

何がそんなに楽しいのか自分でもよくわからないが、こんなにもすべてが可笑しくて仕方がないのは、きっと私が陽介以上にこの日を楽しみにしていたからだと思う。

車を走らせて、向かう先は琵琶湖にあるキャンプ場。

BGMのケツメイシを、窓全開でみんなで声をあげて歌う。

こんなにも青春ぽい事を、大学生活の中で自分が経験出来ると思っていなかった。




やがて、琵琶湖が見えてくるとみんなのテンションは最高潮になった。

関西に20年間住んでおきながら、一度も琵琶湖を訪れた事のなかった私も、想像していた以上に大きなその姿に感動し、思わず車の中からカメラのシャッターを切る。

思い切り夏の風を吸い込んでみると、海の様に広いのに潮の匂いがしなかったので、やっぱり湖なんだと当たり前の事を再確認し、ひとりで小さな感動を覚えていた。










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