ヒコーキ雲に乗って
そう断言した陽介の横顔は、とても凛々しく、清々しく、眩しかった。


あの時抱いた感情は、一言では言い表せない。


いつでも隣りに誰かいると自信を持って言える陽介への羨望。

今まで陽介の隣りにいて彼の思い出に刻まれてきた誰かへの嫉妬。


そして何よりも強く鮮やかに私の感情を支配していたのは、激しい欲望だった。

生まれて初めて、この人を誰にも渡したくない、自分のものにしたいと思った。




このたくましい腕に抱き締められる気分はどんなだろう。

この強い肩で眠れたらどんなに心地良いんだろう。

この大きな手で、髪をなでられたらきっと最高に幸せな気持ちになれるんだろう。


そんな想像ばかりが頭をよぎり、その度に高鳴る鼓動をおさえるのに一苦労だった。


これが、初めて出会った時から気付かないフリを通して来た自分の中に芽生え初めている感情を、もう認めるしかないと諦めた瞬間だった。


私が陽介に恋をした瞬間だった。
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表紙・目次

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