ヒコーキ雲に乗って
「お前、結構上手いな。」

優しい弧を描きながら、ゆるやかなボールがこちらに投げられる。

「陽介こそ。元野球部やったけ??」

精一杯肩に力を込めて、陽介まで届くようにボールを投げ返す。


「おう。高校までずっと野球一筋。野球バカ。」

「へぇー。ポジションは?」

少しだけ、間が空いた後、

「ピッチャー。」

と言いながら、投球フォームを作り、投げる直前で力をゆるめ、また優しいボールをこちらに向かって投げた。

「すごいやん。大学では続けようと思わんかったん?」

「おう。肩痛めたし、未練もなかったし。」

「…ふーん。そっか。」


考えてみると、こうして陽介と2人きりで個人的な話をするのは初めてかもしれない。

思っている以上に私は陽介について知らない事が多すぎると気付かされた。

そう思うと、聞きたい事が山の様にある。


兄妹は何人いる?

どんな音楽を聞く?

どんな映画を観る?

好きな食べ物は?

どんな人と今まで恋愛してきた?

どんな人がスキ?


だけど一番聞きたい事はもっと他にあった。


私がスキって打ち明けたらどうする?

私の事を、スキになってくれる?
















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