ヒコーキ雲に乗って
予想していたよりも、荻原ゼミの不人気ぶりはひどいものではなかった。

募集枠40名のところに18名の応募があったのだ。


貴子は自分の信念を貫き通し、教授が神様の様に優しいと評判のゼミに応募したらしい。

誰に何と言われようと、自分の道を突き進む貴子らしい選択だと思った。


定員割れをしている荻原ゼミでも、一応顔合わせの意味も含めて教授との個人面接があったが、噂通りの変わり者だった。

この変わり者の教授の元に集まる学生達が果たしてどんなメンバーなのか、不安で仕方ないが、もう後には引けない。





「やっぱ変な先生やねー。」

面接を終え、食堂に向かう道中、夏海が彼女独特の鼻にかかった高い声で言った。


「やね。」

あの教授は恐らく、大学の中でもトップクラスの変わり者だ。

面接だというのに、自分の好きな話題をひたすら話し続けていた彼の講義を、これから2年も受けるのかと思うと気が重くなる。


「それにしても香澄、なんで急に荻原ゼミにしようと思ったん?」


まっすぐにこちらを見ながら、夏海が問い掛ける。

少し間を置き、私は口を開いた。

「あたしも夏海と一緒。このままじゃあかんってずっと思ってた。夏海の一言で、あたしも無心で何かに打ち込んでみよって思えてん。」

真剣に私の目を見ていた夏海の表情が、ふっと柔らかくなる。

「そっかぁ。一緒に頑張ろな!」



その笑顔を見て、初めて彼女に出会った日のことを思い出していた。



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