ヒコーキ雲に乗って
その時、ふと教室の後ろのドアの方からやけに騒がしい声が聞こえた。


振り向いてみると、数名の男子生徒が何かの話題で盛り上がりながら教室に入って来るのが見えた。



その集団の中に、ひどく目立つ人物がいた。


いや、目立つというよりはただ単に私の目に留まっただけなのかもしれない。




背が高く、割とがっしりとした体型の短髪の青年。

その外見は、背の高さを除けば特別異性の目を引く様な感じでもなければ、私の好みなわけでもなかった。


だけど、私は彼から目が離せずにいた。

彼の笑顔はあまりにも眩しかった。

その場にいた誰よりも楽しそうに、誰よりも無邪気に笑うその姿はあまりにも眩しかった。



青年が私の視線に気付き、こちらを見た。



初めて目が合ったあの時、なぜか少しだけ、ほんの少しだけ胸の鼓動が早くなっていた事に自分では気付いていなかった。



違う。気付かないふりをしたのだ。



今思えば、もうその瞬間からすべてが始まっていた。




-あの日が、私にとって生涯ただ一度の本気の恋の始まりだった。

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