旅立ち
部活帰りの電車の中で
元気のない悠の口から
久しぶりに山下の話を聞いた
「あのね…
山下、好きな人いるらしいんだ…」
悠はハリのない声でしょんぼりと言った
えっ…
「本人から聞いたわけじゃないんだけどね、
周りの男子達が山下囲んでそんな感じの話してたから…」
「なら他の男子のことかもしれないし」
私の言葉を遮って悠が言った
「でも山下恥ずかしそうにしてたもん!!」
悠は今にも泣き出しそうな顔をして
私に訴えた
(悠、ホントに山下のこと好きなんだね)
「悠はその相手を知りたいの?」
電車の外は大雨になっていた
まるで今の悠の心の中を
具現化しているようにみえた
このとき、
また寒くなった私の心によって
私の心は今にも凍ってしまいそうだった