三毛猫レクイエム。
プロローグ
今なお、色褪せぬ笑顔
帰ってきて、私は驚いた。
みゃぁ~……
かりかりと、私の部屋のドアを引っかいている三毛猫が一匹。
〝え……っと……?〟
うちのアパートはペット禁止だから、住人の誰かの飼い猫というわけではないだろう。
きょとんとしていると、人の気配に気づいたのかその猫がくるりと私を見た。
みゃあ
「……っ」
甲高く鳴いて、私に擦り寄ってきたその猫。
「あ……き?」
なぜかその猫を見て思い出したのは、一年前にこの世を去ったあきの顔だった。
プロローグ 今なお、色褪せぬ笑顔
「だから、あれだって、篠山!」
「違うよ、篠崎だよ」
二人で雑誌を見ながら、そこに写っているモデルの名前を言い合う私達。
「篠山だって」
「もう、あきってばしつこいなぁ。検索してみなよ」
黒いニットの帽子をかぶって、口をすぼめている彼の名前は、滝沢明良(たきざわあきよし)。私の彼氏だ。
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