三毛猫レクイエム。
何もかもを諦めて、逝ってしまったあき。そして、腹を痛めて産んだ息子に、先立たれてしまったおばさん。
そのおばさんの言葉だから、私の胸に強く響いた。
「真子ちゃんも、知っているでしょう?明良が、真子ちゃんの幸せを願っていたこと」
おばさんが私の隣に移動して、私を抱きしめる。私は泣きながらおばさんを抱き返した。
「真子ちゃん、あんな記事を気にしちゃ駄目よ。真子ちゃんは、前を向こうと思ったんでしょう?」
「……っ……あきぃ……」
「泣いていいから。真子ちゃんは、何も悪いことなんかしてないわ」
私を言い聞かせるようなおばさんの穏やかな声が、私にあきを思い出させた。
「ヒロ君のことは、私も良く知ってる。きっと明良も、ヒロ君になら安心して真子ちゃんを任せられると思ってるわよ」
「……ひっ……く……」
「真子ちゃん、明菜が喜んでいたのよ。ヒロ君といる真子ちゃんが、楽しそうだったって。私も話を聞いて、嬉しかったの。やっと、真子ちゃんが前に進めたって」
私は、おばさんの言葉に、ただただ言葉にならない嗚咽を漏らすしかできなかった。
第十章 魂の、向こう側
おばさんは私の背中を撫でながら、
「真子ちゃん、明良のことを知らないような人達の言葉なんかに惑わされないで。明良の言葉に、耳を傾けてあげて」
そう続けた。
あきの言葉――……。
ただ、私の幸せを望んでいたあき。あきの死で、私が立ち止まってしまうことを厭い、たくさんの言葉を遺してくれたあき。
私への思いを、歌という形にして送ってくれたあき。
あきの言葉が、私を満たしていく。
「前に進むことを恐れないで。真子ちゃん、明良は悔しかったと思うの、貴女を自分の手で幸せにできなくて」
「……あき……っ」
「だけど、もしもこのまま真子ちゃんが立ち止まったままでいたら、明良は自分を呪い続けてしまうわ」
あき、滝沢明良、私の最愛の人。
私を置いて逝ってしまった人。
二度と、触れることができない人。