三毛猫レクイエム。
「ヒロ君、明良がそんな子だと、本当にそう思う?」
「でも……っ、タキは真子さんのこと大切に思ってたし……」
「その真子ちゃんを、好きになったんでしょう?」
唇をかみ締めるヒロに、おばさんが優しい言葉をかける。
「明良は、自分がいなくなって、真子ちゃんが苦しむのが嫌だっていつも言ってたのよ。だから、真子ちゃんを置いて死ねないって」
「……っ!」
おばさんは、そっと悲しそうに微笑んだ。
「でも、こうも言ったの。母さんに悪いけど、病気に勝てそうにないって」
「あきっ……」
あきが、死期を悟っていたのに気づいていた。だけど、それをおばさんに漏らしていただなんて、知らなかった。
おばさんの目から、涙がこぼれる。
「あの子ね、私に謝るの。ごめんって。親不孝な息子でごめんって……私の方が、謝りたかったのに。助けてあげられなくて、ごめんなさいと……」
「おばさん……っ」
「おばさん……」
ヒロが、そっとおばさんの肩を抱いた。
「本当に辛かったと思うの。悔しかったと思う。けれど、本気で真子ちゃんの幸せを願っていたの、あの子……」
「……あき……ぃ……っ」
もう、涙が止まらない。あきの想いが、おばさんの想いが、痛いほど伝わってきたから。
「……ごめんなさい、取り乱して」
「いえ」
謝るおばさんに、ヒロが首を横に振った。涙をぬぐって、おばさんが立ち上がった。
「ちょっと待ってて。真子ちゃんに渡さなくちゃいけないものがあるの」
「え……?」
そう言うと、おばさんはリビングを出て行った。ヒロとヨシ、そして私が部屋に残される。
「……真子さん、ごめんな、俺のせいで」
「ううん……っ、ヒロ…は、悪く……ないっ」
嗚咽混じりの言葉も、ヒロには届いた。ヨシが、私に擦り寄る。そして私達の間に沈黙が訪れた。
そこにおばさんが部屋に入ってきた。