三毛猫レクイエム。
「初めてなの?」
「まあな」
その事実になんだか照れてしまう。あきも照れているようで、ばしっと明菜ちゃんをはたいていた。
「こいつ、一人娘で、しかも年が離れてるから甘やかされてさ!」
飽きれたように言うあきだけど、確かに今年26歳になるあきと14歳の明菜ちゃんでは年が離れている。
「二人兄妹なの?」
「いいえ、明良の下にもう一人男の子がいるのよ。明仁っていってね。仕事ばっかりしてるわ」
あきにこっそり尋ねたつもりだったのに、おばさんが答えてくれた。恐縮する私に、明菜ちゃんが抱きついた。
「っ」
「私、お姉ちゃんができたって思ってもいいんだよね?」
なにかを含んで言う明菜ちゃんに、あきはくすくす笑って、
「おう」
と答える。二人のやり取りに、私は真っ赤になった。
「真子姉ちゃん、いくつ?」
「21だよ」
明菜ちゃんはよほど私に興味津々なのか、次から次へと質問をしてくる。
「へえぇ、そっか! え、もしかして大学生?」
「そうだよ」
「うわ、お兄ちゃん、学生捕まえたんだ!」
にこにこと私を見ている明菜ちゃんに、おばさんが笑った。
「明菜は、お姉ちゃんが欲しかったのよね」
「うん、お兄ちゃんは二人もいるし、足りてるの」
こんな風に、あっさり受け入れてもらえるなんて思わなくて、私は拍子抜けしてしまう。そして、あきの家族がこんなにも暖かくて、嬉しくなった。
好きな人の家族が、いい人ばかりで、本当に良かった。
さっきあきも明菜ちゃんも、冗談で言っていたけれど、いつか本当に、家族になれる日が来ればいいのにと願わずにはいられなかった。