三毛猫レクイエム。
「あきに、会いたい……」
あきの前では泣かないって決めてるから、私はぎゅっとこぶしを握り締めて、込みあがってくる熱いものに、必死で耐えた。
おばさんに一言断ってから、私はあきの部屋に向かった。
「明菜ちゃん?」
「あ、真子姉」
声をかけると、はっとして明菜ちゃんが振り返った。ダンボールを開けた手が、止まっていた。
「手伝うよ」
「うん」
あきの部屋にあった贈り物は、初めてこの部屋に入ったころとは比べ物にならないほど増えていた。
「お兄ちゃんは、もう受け取ることができないのに……送ってくれる人がいるって、凄いね」
「TAKIは、人気者だったからね」
明菜ちゃんが笑う。
「真子姉がTAKIっていうと、変な感じ」
「そうかも」
私は二度と封がきられることがない手紙を、ファンレターが集めてある一角に収めた。
「送ってくれるファンの人は、何を思ってるのかな」
明菜ちゃんが、ぽつりとつぶやいた。私は明菜ちゃんの肩を叩いて、
「きっと、TAKIが死んだって、受け入れらないんだよ」
「……真子姉も?」
明菜ちゃんの私を見る目が、潤んでいた。
「……ちょっとね」
「……ごめんね」
「いいんだよ」
本当の姉妹になれると信じていた。だけど、明菜ちゃんが私の本当の妹になることは、もうない。
明菜ちゃんが私の手を握る。私はそれを、握り返した。