三毛猫レクイエム。
今のショップで働いて、もう三年になった。
山里先輩は、たまに私を迎えに来ていたあきとも顔を合わせたこともある。
本当のことを言うと、あきを亡くした直後の頃の記憶は曖昧だ。そんな私を真っ先にフォローして、励ましてくれたのは、山里先輩だった。
山里先輩や他の同僚は、今でも私に気を使っている節がある。
頭では、わかっているんだ。私が前に進まない限り、このままだってこと。他の人にも迷惑をかけてしまうってこと。
極力、普段はあきのことを考えないようにしているし、あきの話が出ても、顔に出ないくらいにはなった。
だけど、やっぱり先ほどのようなやりとりがあると、うまく取り繕えないんだ。
〝やっぱり……私は駄目だな……〟
何もかもがうまくいかない。
あきがいなくなってからは、私の心の秒針は硬く錆び付いたまま、動かないでいる。
本当はこのままでは駄目なことくらい、わかっているのに。
夕焼けを見ながら歩いていると、ヒロと待ち合わせをした公園に通りかかった。なんとなく、私は公園に入る。
人気のない公園で、私はため息をつきながらベンチに腰を下ろした。
そうやって暗くなりつつある空を眺めながら、私は仕事で大失敗をしたときのことを思い出していた。
第四章 錆び付いた、秒針
それは明らかに私のミスだった。
「どうしてくれるんだ!」
「申し訳ございませんっ」
「姫木君は、もう良いから、ちょっと下がってて」
お客様に睨まれながらも、私は奥の部屋に入った。
機種変更の際、誤って、携帯のデータを消してしまったのだ。取引先の人の連絡先とかが登録されていたらしく、お客様にひどく怒られてしまった。
かなり落ち込んで部屋の隅で座っていると、山里先輩が入ってきた。
「姫木ちゃん、大丈夫?」
「先輩……」
泣き虫の私は、先輩を見た瞬間、目に涙を浮かべてしまう。私はそれをぬぐった。