三毛猫レクイエム。
定時になり、迷惑をかけた全員に謝った。
「今度から気をつけて」
「本当に申し訳ありませんでした」
私は盛大に落ち込んだまま、山里先輩と一緒にショップを出た。
「もう、姫木ちゃんってば、落ち込みすぎ。そんなだと明日もミスするよ」
「ごめんなさい」
少し歩いたところで、あきが待っていた。塀に寄りかかって、俯いている。練習帰りらしく、ギターを担いでいた。あきに気づいた山里先輩が隣で息を飲んだ。
「うわ、良い男」
しっかりそれが聞こえてしまって、私は苦笑した。
「あき」
私が声をかけると、あきが顔を上げた。そして私を見てにっこり笑う。
「真子、遅かったな」
「えっ……?」
あきがギターを担ぎなおして、私達のところに歩いてきた。先輩が信じられないというふうに私を見た。
「え、TAKIっ?」
「えっと、先輩、滝沢明良です。あき、こちらショップの先輩の山里咲さん」
私が紹介すると、あきがにっこり先輩に笑いかけた。
「はじめまして。真子がいつもお世話になっています」
「は、はじめまして」
すると先輩は私の耳元であきに聞こえないように、
「ちょっと、姫木ちゃんの彼氏がTAKIだなんて聞いてない!」
「えっと、言うほどのことでもないかと……」
「あれ、俺のこと言うほどのことでもないとか言っちゃうんだ?」
しかし、私達の声はしっかりとあきに聞こえたようで、あきが悪戯っぽく私を見た。