三毛猫レクイエム。
四年も一緒にいた。
いつも笑いあって、時々喧嘩して、それでもずっと一緒にいた。
愛してた。それこそ、このまま結婚して、二人の子供が生まれるんじゃないかと思っていた。そしたら、どんな名前をつけようかななんて夢を見ていた。
それなのに、運命は残酷だった。
「……ご臨終です」
その言葉はまるで夢の中の出来事のように、現実感を伴ってはいなかった。
意味はわかるのに、脳みそが、心が、一向にその事実を受け入れてはくれなかった。
「明良っ……!」
「お兄ちゃん!!!」
医者が目を伏せる。
口元に笑みを浮かべながら、ベッドに横たわっているあきに、すがりつくおばさんと明菜ちゃん。私の隣で呆然としているおじさん。明仁さんは、仕事で間に合わなかった。
「あき……」
あきが、死んだ。
数日前も、新曲の歌詞だと言いながら詩を書いていたのに。
早くメンバー達とリハーサルしたいと言っていたのに。
「あき……」
私は、そっとあきに近づいた。泣き叫ぶ明菜ちゃんを、おばさんが泣きながら抱きしめている。
「あき、目を開けてよ……」
お願いだから、声を聞かせてよ。
「あき……」
私は、そっとあきの手に触れた。その左手の薬指にはめられている、私とおそろいの指輪。
「あき……っ」
冷たくなってしまったその手に、私の目から大粒の涙が零れ落ちた。
命の灯火が消えてしまったあきは、とても穏やかな笑顔で、ただ眠っているかのようだった。
私の大好きな、最愛の人は、あきは、私を置いてこの世を去ってしまった。
享年、二十九歳。ファンに惜しまれつつの、早すぎる死だった。