三毛猫レクイエム。
第五章
塗り変わる、思い出
「ヨシ、久しぶり!」
みゃあっ
仕事が休みだった日、ヒロがヨシを連れて来てくれた。待ち合わせはあの公園だ。
真っ先にヨシに声をかけた私に、ヒロは苦笑した。
「俺、ちょっとヨシに嫉妬しちゃうかも」
「そんなこと言わないの」
私は笑って、ヨシを抱き上げた。擦り寄ってくるヨシが、可愛くて仕方がない。それを見たヒロは面白くなさそうに、
「ヨシはずるいな」
と、呟いている。私はヨシを目元まで持ち上げて、ヒロの方を向くと、
「ヒロさんがずるいとか言ってますよ。そんなことないですよ」
そう、高い声で言ってみた。その瞬間ヒロが吹き出す。
「ちょっと、真子さん、一体何してるの」
「ヨシの心を代弁してみたの」
私も笑って、ヨシを膝の上に乗せた。
「本当にヨシ、可愛いよね。黒い毛が多めの三毛猫って、すっごく可愛いと思うの」
「だよな。タキも一人ぼっちのヨシ見つけたとき、一目惚れしたんじゃね?」
「そうかもしれない!」
可愛い子猫のヨシを前に、連れて帰るか否かを悶々と考えてるあきの姿を想像して、私は笑ってしまった。
ヨシとじゃれている私の隣で、ヒロは携帯をいじっている。
「あ」
「うん?」
カシャッ
「え」
ヒロがあげた声で、私とヨシが同時にヒロを見た瞬間、携帯で写真を撮られた。
「ちょ、何撮ってるの」
「いや、ヨシと真子さんが戯れてるのが可愛かったから。もちろん、ヨシがだけど」
「なにそれ!」
ヒロが写真のデータを見せてくれた。ほとんどがヨシの写真で、私は笑ってしまう。