三毛猫レクイエム。
『えっと、それじゃあ、あの噂の人は?』
『お世話になってるレコード会社の役員の娘さんなんです。光栄なことに僕のファンだということで』
話を振られて、やっとあきが口を開く。その内容は、前に話してくれたこととなんら違いはなかった。
『そうなんですか! え、あ、じゃあ、彼女と喧嘩とかは?』
白元の言葉に、あきは苦笑した。
『なりましたよ。盛大に』
『追い出されちゃったもんな』
『うるさいな』
ユキが笑いながらあきをつつく。
『さっき言ってた「AINOUTA」も、実はタキの彼女への歌なんですよ』
『さっさと仲直りしろよな』
ヒロの後に、テツが続ける。あきは苦笑しっぱなしだった。
『その彼女と、ゆくゆくは結婚とか?』
『まあ、そろそろ、ね』
『んなこと言う前に、仲直りしろよな!』
はにかんで応えたあきに、テツが突っ込みを入れた。
『それじゃあ、彼女へのコメントを』
『あー……ごめんな。不安とか、考えてあげられなくて。俺、かなり子供っぽかったよな……。いつも心配させてごめん。これから、気をつけるから、また一緒にいて欲しい』
あきの途切れ途切れの言葉の後、会場から拍手が沸き起こった。
番組が終わって、あきから電話がかかってきた。
「もしもし」
『真子?』
「うん」
『番組、観た?』
少しだけ、声が緊張しているように思えるのは、気のせいだろうか。
「観たよ。あき、入っておいでよ。部屋の前にいるんでしょ」
『っ……わかった』
さっきのメールが来たとき、ちょうど車が止まって、離れていった音がした。なんとなく、あきが来たんじゃないかと思っていたけど、やっぱりそうだった。