三毛猫レクイエム。
そっとソファに座って、三毛猫をおろした。三毛猫は私に擦り寄ってくる。
「……可愛い」
YOSHIと刻まれていたのは、この子の名前だろうか。
「ヨシ?」
ためしに呼んでみると、三毛猫はぱっと顔を上げた。まるでそれが自分の名前だとわかっているかのような仕草に、私は感心する。
「君は、ヨシっていうの?」
みゃ
「ふふ、頭がいいんだね」
私はくすっと笑って、携帯を手にし、刻まれていた番号を押した。
数回のコール音の後、
「……もしもし?」
訝しげな低い男の声が電話に出た。
「もしもし、あの、こんばんは。三毛猫を拾って、首輪にこの番号があったのですけど」
「えっ、本当ですか!?」
返ってきたのは、驚いたような声だった。
「今日は遅いですし、一日うちで預かりますから、明日の朝迎えに来て上げてください」
「あ、ありがとうございます。俺、さっきからヨシのこと探してたんです……あ、俺、阿東っていいます」
「姫木です。えっと、この子みつけたのは、島田町なんですけど……」
「えっ、島田?!あー、明日どこに迎えに行けばいいですか?」
さすがに家の住所を教えるのは気が引けたので、近くの公園で待ち合わせをすることにした。
「わかりました。本当にありがとうございます」
「いえ、それでは明日」
「おやすみなさい」