三毛猫レクイエム。
タキは、凄く格好良くて、理想のバンドマンだった。私にとったらバンドマンは、手の届かない、見ているだけの、違う世界の住人のはずなのに、タキの存在は異常とも思えるくらい近しかった。
気にかけてもらえることが嬉しくて、たまに二人きりで会ったりするのが嬉しくて、私はどんどんタキに惹かれていっていた。
タキが私のことを気に入ったと言ったテツの言葉を思い出し、少しにやけてしまう。そして、それが本当だったら良いのになと思う。
「……タキと付き合えたらな……」
思わず、願望が口に出てしまって、私は真っ赤になった。タイミング良く携帯が鳴って、私は驚く。
『今、何してる??』
タキからのメールに、まさかタキと付き合えたらなとか妄想してましたとは言えず、
『ごろごろしてた(笑)』
と、返信した。するとすぐに返事が来る。
『今暇なの?』
『うん、暇だよ』
タキからのメールには絵文字がないけれど、私からのメールは絵文字付き。少しくらい可愛く見せたい、女心だ。
『今から会わない?』
そして、そんなタキからのメールに、私は嬉しくてにやけながら馬鹿みたいにソファで飛び跳ねた。
『どこで?』
それをおくびにも出さないように、返信する。
『迎えに行くからさ、海にでも行かない?』
この季節、海には人気がないだろう。人気のない砂浜でタキと二人きり。そんなシチュエーションを想像して、一人で盛り上がる。
『行く!』
『それじゃあ二時間くらいしたら、バイクで迎えに行くから』
わざわざバイクで、って教えてくれたのは、私の服装を考慮してくれてるからだと思う。些細な気遣いが、やっぱり嬉しかった。