三毛猫レクイエム。
メールをもらってから、すぐに支度をして、タキがいつ来てもいいように待っていると、携帯が鳴った。
『今外で待ってる』
『今行くよ』
急いで戸締りをして、タキのところへと小走りで駆け寄った。
「そんなに慌てなくても」
「だって」
くすくす笑うタキに、私は赤面した。そんな私の頭を、タキが撫でる。どきんと、心が躍った。
「タキ、バイク持ってたんだね」
タキが寄りかかっていたのは、黒いボディに銀色の装飾がなされた、少しごつめのバイク。馬力とかモデルとか詳しいことはよくわからないけど、とにかく強そうなバイクだった。
「ん? ああ、これユキの。俺のは昔売ったから、前からよく借りてるんだ」
タキの言葉に、私は目を丸くした。
「ユキの? 似合わない!」
私の反応に、タキが笑う。
「はは。あいつ、見た目が可愛らしいから、持ち物とか服装とかは男らしくしたいんだろ」
「声は一番低いしね」
「はははは! 確かに見た目と声が合ってないよな、あいつ!」
タキが笑いながら、私にヘルメットを渡した。そして自分もヘルメットをかぶる。
「乗ったことある?」
「うん、前に」
タキがまたがったバイクの後ろに、よいしょとまたがる。そして、タキの広い背中にしがみついた。
「いいな」
「え?」
「なんでもない。しっかりつかまってろよ」
そして私達は出発した。
たどり着いた海には、見事に私達以外、誰もいなかった。
「二人っきりだな」
「うん」
タキが微笑んで、私に手を貸す。私はタキに支えられて、防波堤から砂浜に下りた。
「風がまだちょっと冷たいね」
「寒くない?」
「大丈夫」
二人で並んで砂浜に座った。私は笑って、
「私こんな時期に海に来たの初めてだよ」
「本当に?」
タキがくすっと笑って、そして真剣な顔になった。