三毛猫レクイエム。
電話を切って、私はヨシを抱きかかえた。そしてふと気づく。
「あれ、君、男の子なの?」
みゃあ
ちょっと怒ったように鳴くヨシに、私はごめんごめんと謝った。
「三毛猫は、ほとんどがメスなんじゃなかったっけ」
一人呟いても、答えてくれる人はいない。ヨシがじっと私を見つめている。その瞳に、なぜか胸が締め付けられるような気分になった。
ヨシを見ていると、あきを強く感じる。その理由に思いをめぐらし、そしてはっと気づいた。
ヨシは、あきと同じ瞳の色をしていた。
第一章 深き、緑の視線
緑がかったあの目と視線がぶつかったとき、私の時間がとまったような気がした。
私が初めてあきと出会ったのは、当時気に入っていたバンドのライヴで出待ちをしているときだった。
会えるかどうかはわからないのに、勝手に高まる期待。この高揚感が出待ちの醍醐味でもあった。
そんな中、ニットの帽子をかぶった黒髪の男とレザースーツ姿の赤髪の二人組が通りかかる。
「あれ、誰かの出待ち?」
赤髪の方が、気さくに声をかけてきた。見た目からしてバンドマンなのだろうけど、私は彼らの顔を知らなかった。だから、答えに詰まってしまった。
「テツ」
笑いを含んだ低い声を聴いた瞬間、私は心がしびれるような衝撃を受けた。