三毛猫レクイエム。
第七章

惹かれだす、心

 突然のヒロの告白と、あきの歌詞。
 家に帰った私は、あきの歌詞が書かれた紙を眺めていた。


 Dear M、最愛のM、このMは、真子とマリアをかけたものだろう。紛れもなく、私へのメッセージだ。
 涙が枯れたら、前を向いていけ。それも、あきがいつも言っていたこと。

「引き裂かれそうな痛み……」

 化学療法で、抗癌剤を大量に投与していたあき。きっと、酷い痛みを覚えていたはずだ。それと、私を思っての心の痛み。

「あきも、残酷だと思ったよね……」

 ずっと一緒にいられると信じていたところに、まさかの白血病の発覚。
 本当は、出会わなければ良かったのかもしれない。出会わなければ、こんな思いはしなかったのかもしれない。
 だけど、私はあきと出会いたくなかったと思ったことは一度もなかった。
 初めて出会ったとき、確かにあきのことを運命の人だと思った。あのときの感覚は、そうとしか思えなかった。
 同じことを、あきも感じてくれていたんだね。

「あき……」

 あき、自分が死ぬってわかっていなかったら、こんな歌詞は書けないよね。あの頃から、あきは生きることを諦めていたの?
 自分が死ぬと、私を置いていくと、覚悟していたの?
 それでも私の前で、笑っていたの?

「あき……っ」

 あきが私に注いでくれた愛を、私が忘れるわけがない。私があきを愛したことを、忘れるわけがない。
 心の隅だけなんかじゃなくて、全身でこの思いを感じてる。
 あきが私にくれたものを、忘れることなんてできるわけがない。
 でも、あき、私の涙は一向に枯れてくれないの。だけど、あきが望んでいるから、私は前に進まなくちゃいけない?
 あきは私を解放したけれど、私はずっとあきに捕らえられたままなのかな?

「ごめんなさい……っ」
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