三毛猫レクイエム。
「奥も見てみよう!」
「うん」
すっかりテンションが上がった私は、微笑んでいるヒロとともに園内を見て回った。
「ペンギンだ! 可愛い!」
南半球にいるペンギンなどもいて、私は童心に返ったかのようにはしゃいだ。携帯で必死に写真を撮ろうとしていると、カシャっと背後から電子音がした。
「えっ」
「撮っちゃった」
ヒロが笑いながら、携帯を振る。
「ひどい! 盗み撮り!」
「んじゃペンギンと一緒に撮ってあげるから。笑って」
私はヒロの携帯に向かって笑顔を作った。カシャっと再び電子音が響く。
「ヒロも撮る?」
「いや、俺は……」
「一緒に撮ろうよ!」
私は躊躇うヒロの腕を引いて、ペンギンをバックに二人の写真を撮った。
「次行こう!」
「うん」
年甲斐もなくはしゃいでいる私に、ヒロは文句も言わず付き合ってくれる。それにふと気づいた私は、突然恥ずかしくなった。
「ご、ごめん、はしゃぎすぎだよね……」
「いや」
「でも、いい年して、子供みたいに」
真っ赤になってうつむいた私の頭を、ヒロがそっと撫でた。
「笑ってる真子さん、素敵だから。気にしないで楽しみな」
「……うんっ。ヒロも、楽しもう!」
せっかくだから、変なことを考えないで、楽しむことにした。
第八章 一寸先の、闇
混み合わないうちにと、早めの夕食をとることにした私達。
「たくさん写真撮れたね」
園内のレストランで、オーダーの後、食事が来る前に携帯のデータを確認する。
「ヒロのも見せて?」
「それじゃあ、真子さんのも」
私達は携帯を交換した。ヒロの携帯の画像を見ると、何枚か隠し撮りの私の写真がある。