欠点に願いを

III






三日後、雪は学校に復帰した。
試験の二日前だった。


「雪ちゃん、からだ大丈夫?」

「勉強分かんなかったら、俺が教えるから」

「この時期は体調崩しやすいし、無理しちゃ駄目だよ」


クラスの人気者である雪は、色んな人から心配された。
優しい雪は、さりげなく「勉強は宏樹から教えてもらった」と答え、知らないうちに俺の株をあげておいてくれたらしい。
その影響か、クラス内で俺を見る目が変わったみたいだ。




しかし、事情が分かるのはクラスの奴らと先公達くらいだった。
「暴れまくりで他の学年やPTAからも睨まれていた俺の名前が、我が子の会話から出てきた」とか意味分かんない言いがかりの電話が、学校には殺到したらしい。
俺がどう思われようと構わないけど、それだけ反応がデカいともはや笑える。

その所為で、相変わらず面倒臭い連中から絡まれてた俺は、せいぜい周りの人・特に雪を巻き込まないように注意しながら、連中を追い払っていた。

それを見てたクラスの連中が、ふざけて俺を「番長」とか「組長」と崇め始めた。
何だ俺の立場、そんなに偉くないし。ってかヤクザか。






雪に教える為に俺も頑張ったからか、雪の退院後に一緒に勉強したからか、俺と雪は直後の定期試験で学年でも上位の成績を叩き出した。
それによってクラスでの立場が、雪は「頑張り屋のクラスの可愛いマスコット」、俺は「喧嘩最強で頭も切れる組長」へと昇格したようだ。
雪はさておき、俺の立場はどうなの?
ってか俺、学級委員みたいな堅苦しい仕事してないし願い下げだし、にも関わらず組長って。





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