欠点に願いを
「親父さん」
「あいよ」
俺は塩ラーメン、雪は豚骨ラーメンを頼む。
……雪、つくづくコッテリ系が好きな奴だな。
雪が頼んだ豚骨ラーメンはすぐに運ばれてきて、雪はパキッと気持ち良く割り箸を割る。
店内で流れているラジオだか有線から、DEARの新曲が流れてきた。
「あ、DEARだ。…最近目立つよなぁ」
「そうだねぇ」
「俺が初めて雪のお見舞いに行った時、雪はDEARが出演してる番組観てたよな」
「…そうだったっけ?」
あまり興味無さそうに答える雪。
……どうやら雪は、目の前の豚骨ラーメンの方がよっぽど大事らしい。
「……そういえばDEARのメンバーって、雪と同じ神奈川県出身らしいな」
「そりゃそうだよ」
……あれ? 雪って確か…………。
「…オマエさ、流行とか分かんないって言ってなかったっけ?」
「DEARは特別だよ。ボーカルの拓哉、僕の従兄弟だからね」
「へぇ~~。…………はあぁっ!?」
俺は驚いて立ち上がる。
勢いの余り、俺の塩ラーメンを運んでくれてた店員さんも驚かせてしまった。
雪も、さすがに手を止めて俺を見上げる。
「…あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてない聞いてない!! サイン欲しいんだけど!」
「……僕、拓哉兄ちゃん達のマネージャーじゃないんだけど」
雪が苦笑する。
俺は我に返り、ラーメンを喰う事にした。
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