欠点に願いを






「親父さん」

「あいよ」


俺は塩ラーメン、雪は豚骨ラーメンを頼む。
……雪、つくづくコッテリ系が好きな奴だな。


雪が頼んだ豚骨ラーメンはすぐに運ばれてきて、雪はパキッと気持ち良く割り箸を割る。

店内で流れているラジオだか有線から、DEARの新曲が流れてきた。


「あ、DEARだ。…最近目立つよなぁ」

「そうだねぇ」

「俺が初めて雪のお見舞いに行った時、雪はDEARが出演してる番組観てたよな」

「…そうだったっけ?」


あまり興味無さそうに答える雪。
……どうやら雪は、目の前の豚骨ラーメンの方がよっぽど大事らしい。


「……そういえばDEARのメンバーって、雪と同じ神奈川県出身らしいな」

「そりゃそうだよ」


……あれ? 雪って確か…………。


「…オマエさ、流行とか分かんないって言ってなかったっけ?」

「DEARは特別だよ。ボーカルの拓哉、僕の従兄弟だからね」

「へぇ~~。…………はあぁっ!?」


俺は驚いて立ち上がる。
勢いの余り、俺の塩ラーメンを運んでくれてた店員さんも驚かせてしまった。

雪も、さすがに手を止めて俺を見上げる。


「…あれ、言ってなかったっけ?」

「聞いてない聞いてない!! サイン欲しいんだけど!」

「……僕、拓哉兄ちゃん達のマネージャーじゃないんだけど」


雪が苦笑する。
俺は我に返り、ラーメンを喰う事にした。





.
< 39 / 108 >

この作品をシェア

pagetop