欠点に願いを





体育館に移動した俺達は、手分けして準備をした。
照明部の仕事は、後輩達と一緒にフットライトを並べ、青・赤・黄のカラーフィルターをそれぞれ取り付ける。
後輩達が照明の確認をしている間に、俺は中二階に三台あるスポットライトを電源に繋いで、確認をしていた。

……ついうっかり、スポットライトの角に額をぶつける。


「あでっ」

「どーしたー?」


体育館の床からフットライトの位置の微調整をしてくれてた雄一が、俺の方を見上げる。


「何でもないっ」


ちょっと痛むけど。
雄一は俺の言葉を信じたらしく、それ以上は何も聞いてこなかった。




一度、全体で劇を全部演じる。
それぞれのスタッフも実際と同じように動いた。
発声や動きの欠点が分かるし、色々と微調整出来るから欠かせない。
また、今回は体育館の床からビデオカメラで録画し、全員で確認する事になっていた。

俺は、実際と同じように照明を動かし、気付いた事を台本に書き込んでいく。
瞬きをしたり、前髪がかかったりすると、額が少しだけ痛んだ。





.
< 55 / 108 >

この作品をシェア

pagetop