欠点に願いを





「え? 何であたしの名前を……?」


知っているんですか、と続けようとして、声をかけてきた男性の顔を見つめた。
多少は痩せたかもしれないけど、それはあたしが見知った顔。そして弦楽器を担いでる。


「……健人?」

「そうだよ、健人だよ! うわぁー悠、俺のコト覚えててくれたんだね!」


一気に顔が明るくなり、テンションが上がる健人。
しかし、あたしはバイト中である。


「悠、最近どうしてる?」

「あたし、バイト中なんだけど…。」


長話になりそうな予感がして、あたしが今日バイトをあがる時間と、健人が探してた筆記用具の売り場だけ教えた。


「じゃあ、バイト終わる頃にまた来るね!」

「取り敢えず今は、バイトの邪魔だから!」


ノリノリの健人を、容赦なく追い払った。





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