欠点に願いを

II






☆★☆★☆★☆★


あたしは買ったばかりのフランス語の教科書を大事に抱えて、教室に戻ってきた。

この高校の特長でもある、外国語の自由選択。
あたしは入学前から、フランス語を勉強しようと決めていた。


「荻原さん、外国語どうした?」


振り返ると、もう一人の荻原姓・荻原健人がいた。


「フランス語」

「嘘っ、俺もだよ! じゃあ、外国語の授業でも宜しくね」


ニコニコと笑う荻原健人。


「うん、宜しく。……あと、さん付けで呼ぶの無しね、他人行儀っぽいし。悠で良いよ」

「分かった、悠ね。…じゃあ俺のコトも、健人って呼んでね」

「うん、健人ね」


……この経緯が無かったら、あたしのその後の高校生活は無かったと思う。
数少ない特技も、想い出も、何もかも。


☆★☆★☆★☆★





.
< 77 / 108 >

この作品をシェア

pagetop