欠点に願いを
II
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あたしは買ったばかりのフランス語の教科書を大事に抱えて、教室に戻ってきた。
この高校の特長でもある、外国語の自由選択。
あたしは入学前から、フランス語を勉強しようと決めていた。
「荻原さん、外国語どうした?」
振り返ると、もう一人の荻原姓・荻原健人がいた。
「フランス語」
「嘘っ、俺もだよ! じゃあ、外国語の授業でも宜しくね」
ニコニコと笑う荻原健人。
「うん、宜しく。……あと、さん付けで呼ぶの無しね、他人行儀っぽいし。悠で良いよ」
「分かった、悠ね。…じゃあ俺のコトも、健人って呼んでね」
「うん、健人ね」
……この経緯が無かったら、あたしのその後の高校生活は無かったと思う。
数少ない特技も、想い出も、何もかも。
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