引っ込み思案な恋心。-3rd~final~





「ごめんな、柚。俺が馬場に言ったから、逆に疑われて」



「拓のせいじゃないよ…」



「馬場もせっかく柚を頼ったんだから、最後まで信じてやればいーのにな」






そう言うと拓はテーブルの上の空のグラスを片付け始めたから、私もそれを手伝った。





だけど…、拓にそう言われても全然気持ちが晴れない。






「あのウワサがまさかホントのコトだとは思わなかったな〜。俺はウワサ聞いてるから柚にも話すけど、マサが強引に馬場を襲おうとしたとか何とか…」



「うん。修学旅行の時に、制服脱がされたって…」



「未だに信じられないんだけど。マサはそーゆートコきっちりしてそーに見えるから。俺と違って…」



「自分で言ったらダメだよ」



「でも俺はもう柚を泣かすようなコトは絶対しないって決めたし!」



「うん…、ありがと」






テーブルの上の片付けが終わって、拓が私の身体をそっと抱き締めてきた。





だけど…、今日は優しく包み込んでくれるだけで、それ以上は何もしてこなかった。






「……いちゃつく気分じゃないよな。送るから帰ろーぜ」



「ごめんね、拓」



「俺もちょっとは柚の気持ち分かってあげられてんのかなー」






拓はそうぼんやりとつぶやきながらエアコンのスイッチを消した。





そして拓は空のグラスが載せられたお盆を、私は帰る準備をしたバッグを持って、拓の部屋を出た。








…拓はきっと、倉本くんのことを自分のことにも置き換えてるんだと思う。





1年ほど前に、私の場合にはキスを迫られそうになって拓としばらく距離を置いていた。





状況は違うかもしれないけど、離れた理由は何となく似ている。





だからこそ…、拓にも色々と考えるところがあるんじゃないかな…?





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