引っ込み思案な恋心。-3rd~final~
「拓ーーっ!頑張ってー」
私は拓に届けとばかりに声を上げて応援した。
拓はバトンを受け取った途端に目を見張る程のスタートダッシュを見せた。
足の回転が他のアンカー走者と全然違う。
思わず「これが全国レベルか…」とため息が漏れるくらいのすごさだった。
そのまま拓はスピードを徐々に上げて行き、トラックを4分の1走ったところで上位3人に追いついていた。
「すごい、拓!!このまま抜けるよ」
「あの速さだと余裕で1位になれそうだな」
倉本くんも感心した表情でレースの様子を見守っていた。
そして……トラック半周を過ぎた所で拓が3人を一気にかわして1位に躍り出た。
「やった!1位だ…!」
「瀬川くん、ホントすごい!!」
拓が1位になった途端、うちのクラスの応援テントから大きな歓声が沸いた。
私も隣にいたあーさんと手を取り合って喜んだ。
拓…すごい……。
カッコ良すぎるよ…!
そこからはもう拓の独壇場だった。
3人を抜いた後、拓はまだまだ最後の追い上げで猛ダッシュを見せつけ、その差をどんどん広げていく。
全校生徒が拓のその走りに注目し、所々拍手が沸き起こるくらいみんなが魅了されていた。
そして…、一瞬にも見える走りを見せた拓はそのまま一番にゴールテープを切った。