引っ込み思案な恋心。-3rd~final~
するとあゆはまた少し悩む素振りを見せたけど、意を決したように私とあーさんを見てきた。
「夏休みにいとこと親戚で北海道に旅行に行ったんだ。私、今までは夏休みも部活漬けだったから、こーゆーのホント久々でさ」
「うんうん」
「旅行会社で色々プラン決めてから行ったんだけど、その時の旅行会社のプランナーのお姉さんの対応がすごくいい感じで…」
思い出しながら話し始めたあゆの様子は、少し生き生きしている気がする。
『聞いて欲しかった』ってオーラがすごくよく出てるよ。
「だから、旅行とか観光業とか、そーゆーのにちょっと憧れてるところなんだ。どーやったらそんな仕事に就けるのか分かんないけど…」
「商業科じゃ、無理なのかな?やっぱこういう仕事って、地理や英語は必須?」
「だったらS女の国際コースかな?」
「やっぱそーだよねぇ?修学旅行も外国ってのが魅力だし」
「でもS女じゃダメなの…?」
するとあゆは少し小さい声になって「うん…」とうなずいた。
「うち、3人兄弟だから。北海道行きだって何年も前からやりくりしてコツコツ貯めたお金で何とか…って感じだし、まだ弟2人にお金かかるだろうから、私立は避けたいんだよね」
「それは…、親に言われたの?」
「ううん。うちの親は『行きたい所ならどこでも』って感じで言ってくれるんだけど、正直…経済状況分かっちゃってるから」
「確かにS女は制服も可愛いし校舎も綺麗だけど、学費は高いって有名だよね」
あーさんがそう言うと、あゆは両手で頬杖をついて「はぁ〜〜」っとため息をついた。
私もあーさんもそれ以上何も言えなくなってしまって、3人でしばらく無言の時間を過ごした。