引っ込み思案な恋心。-3rd~final~
「柚。手ぇ寒いだろ」
「ありがと」
校門を出て、拓から差し出された手を、私はゆっくりと掴んだ。
つながれた手は、どんな時でもあたたかい。
「合格したんだから自信持てよ、柚。合格通知手に取ってしまえばこっちのもんなんだから」
「拓は…、不安とかないの?」
「柚と一緒の高校通えるのに?どこが不安なわけ?」
きっと…面接の時に私が答えられない質問をした人だって、A高校の先生だろうし。
もし担任とかなったら…どうしよう。
「推薦で来たんだから」なんて目で見られちゃったりするのかな?
「まー…入ってからのコトは、入ってから考えればいーじゃん。とりあえず俺らは受験終わったわけだし、4月までのんびりできるよなー」
そう言ってるうちに、あっという間に拓の家の前まで着いた。
拓はいつも通りカバンを家の中に入れて、すぐに出てきた。
「また環境が変わって不安なのも分かるけどな、頑張ればいーじゃん。俺もいるし」
「拓…」
「細井だって受かれば一緒の学校だし、知り合いが完全にゼロではない。そう思えば少しは気が楽じゃねぇ?」
「うん、そうだね」
「まずは…せっかく二人でのんびりできるんだし、デートしてえよな」
………はっ!!
『デート』っていう言葉で思い出したけど、そう言えば二人でA高に受かったら…
拓とキス以上のこと………。
まさか受かるなんてあんまり思ってなかったから、すっかり忘れてた。
どうしよう…、気持ちの準備ができてないよ。。。