引っ込み思案な恋心。-3rd~final~
卒業アルバムをそっと閉じた私の手に、拓の手が重なった。
「俺の手は…、いつも柚をあっためるからな」
「うん、温かいね」
「柚……」
私の顔に拓の顔が近付いて、ゆっくりと唇と唇が重なった。
柔らかくて温かい、拓の唇の感触。
ずっとずっと、忘れたくない感触。
「なあ…。今日はもう遅いけど、近いうちに……」
「うん……」
拓が何を言いたいのか、分かってる。
今以上に、もっともっと身体の距離を近づけたい。
それが、二人がA高に揃って合格した後の約束だったもんね。
私も少しずつ、心の準備を始めてる。
もちろん緊張するけど…、拓だったら大丈夫。
そんな気がするんだ。
きっと、近いうちに…。
「…こうやって安心できるまで、すげー長かったな」
「そうだね。でも私は、卒業まであっという間だったよ。入学式で緊張していたのがこの前って感じがする」
「そーだな。柚、俺が話し掛けてもすぐ逃げるし、まともにしゃべってくれないし」
「うわぁ、あの時のことはもういいよ……」
「そんな柚も可愛いと思ってたけどな、俺は」
「え…」
拓、もしかしてそんな前から私のことを気にかけてくれてたの…?