引っ込み思案な恋心。-3rd~final~





卒業アルバムをそっと閉じた私の手に、拓の手が重なった。






「俺の手は…、いつも柚をあっためるからな」



「うん、温かいね」



「柚……」






私の顔に拓の顔が近付いて、ゆっくりと唇と唇が重なった。





柔らかくて温かい、拓の唇の感触。





ずっとずっと、忘れたくない感触。








「なあ…。今日はもう遅いけど、近いうちに……」



「うん……」






拓が何を言いたいのか、分かってる。





今以上に、もっともっと身体の距離を近づけたい。





それが、二人がA高に揃って合格した後の約束だったもんね。





私も少しずつ、心の準備を始めてる。





もちろん緊張するけど…、拓だったら大丈夫。





そんな気がするんだ。





きっと、近いうちに…。






「…こうやって安心できるまで、すげー長かったな」



「そうだね。でも私は、卒業まであっという間だったよ。入学式で緊張していたのがこの前って感じがする」



「そーだな。柚、俺が話し掛けてもすぐ逃げるし、まともにしゃべってくれないし」



「うわぁ、あの時のことはもういいよ……」



「そんな柚も可愛いと思ってたけどな、俺は」



「え…」






拓、もしかしてそんな前から私のことを気にかけてくれてたの…?





< 278 / 281 >

この作品をシェア

pagetop