引っ込み思案な恋心。-3rd~final~
「私、お小遣いが少なくてさ。班長になる人は大抵ガイドブック買ってきてそれを丸写ししてるらしいんだけど、それもできないし…。さっき図書室行ってみたけど、やっぱり京都のガイドブックは全部借りられてて」
「あっ、私手伝うよ。元々その気だったから。ガイドブック今手元にあるから貸すよ」
「え?杉田さんガイドブック持ってたんだ?いいの?」
「もちろん。私も班員だし、手伝わせてよ」
私は急いで自分の席に戻り、すでに帰る用意の終わったカバンから拓とのデートのためにと買ったガイドブックを取り出した。
それを蘇我さんに差し出す。
「ありがと…。助かったよ。明日の放課後までだったから、かなり焦ってたんだー」
「私、日誌書いて提出しないといけないから。それが終わったらまた蘇我さんの所に戻ってくるね。一緒に考えようよ」
「ごめんね、迷惑かけて…」
「気にしないで?できるところまでやってていいから…」
それだけ言い残して、私はダッシュで席に戻り、日誌を開いた。
とにかく急いで日誌を仕上げて、それを職員室にいる担任の先生に持っていく。
ようやく日直の全ての仕事が終わって教室に戻ると、蘇我さんはまだ自分の席で私のガイドブックをペラペラとめくっていた。
「…どう?進んでる?」
「ああ、杉田さん。終わったの?」
「うん。……あ、だいぶ埋まってきたね」
「途中までは何とか…。まあたぶんあの二人のことだから計画表通りにはしないと思うけど、回るのに無理のないルートにしなくちゃ怪しまれるでしょ?」
「まあ…、確かに。京都市内って意外に広いもんねー」
…と言いながら、私もガイドブックを手にして、巻頭の京都市内の地図を眺めてみる。