蜜色トライアングル【完】



「圭ちゃん? どうかしたの?」

「なんでもないよ。……寒くない?」

「ん、大丈夫。圭ちゃんのジャケット、あったかいね」


二人はやがて車の前まで来、運転席と助手席にそれぞれ乗り込んだ。

圭斗の車はCZ-Rというハイブリッドのスポーツタイプで、普通車ではあるが実質二人乗りだ。

夜闇の中、黒い車体は闇に溶け込んでいる。

圭斗がエンジンを入れ、発車すると、ボンネットが街灯の光を反射しキラリと光った。


車はスポーツタイプではあるが、圭斗の運転は超安全運転だ。

急発進も急ブレーキもない。

運転初心者というわけではなく、慣れているからこその余裕ある運転だ。


「やっぱ大人だよね、圭ちゃんは」

「え? 何?」

「なんでもないよ」


木葉の言葉に、圭斗は軽く首を傾げた。

やがて。

三つ目の信号に差し掛かった時、圭斗が前を向いたまま口を開いた。


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