蜜色トライアングル【完】
「大人だからってわけでもないさ」
「そうなの? ……私、こういうお店来たこと、あんまりないの。もう大人なのに……」
いじけたように木葉は言う。
圭斗は木葉の隣で夜景を見つめながら、少し笑った。
「木葉も友達と来たりするんじゃないの? 女の子の方が店には詳しいだろう?」
「友達はみんな、彼氏と来るの。彼氏と……デートで……」
言葉の最後は尻すぼみになる。
木葉は展望台の隅に置いてあった長椅子に腰を下ろした。
見ると、他の椅子はカップルばかりだ。
いちゃついたり、キスしたり……二人だけの世界を満喫している。
木葉はトロンとした目でそれを眺めていた。
いつのまにか圭斗が木葉の横に座り、支えるように肩を抱く。
木葉は圭斗の温かさを感じながら、ゆっくりと夜景に視線を戻した。
「私も、彼氏がほしいなぁ……」
「木葉……」
「ねぇ圭ちゃん。圭ちゃんの彼女はどんな人? 圭ちゃんは彼女のどんなところが好き?」