蜜色トライアングル【完】
呟くように言った木葉の横で、圭斗が息を呑む。
圭斗の瞳が探るように木葉の瞳を見つめる。
その瞳によぎる熱さに『ん?』と思った時、圭斗がくすりと笑って言った。
「そうだな……。いろいろあるけど、素直で心がきれいなところ……かな?」
「……」
「その子は人を利用しようとか、人を貶めようとか、そういうことを思いもしない子だ。何かあっても自分でがんばって、乗り越えようとする」
「……」
「だけど寂しがり屋で、表面上はしっかりしてるけど、多分一人じゃ生きられない。凛花と逆だな。あいつは女の武器を使うことも男に縋ることも知っていて、それを躊躇しない」
「……」
「でもその子はそういうことをしない。……でも寂しがり屋なんだ。だから惹かれる。おれが傍にいるって……なんでもしてやるからって。そう言いたくなる」
「……」
「わかるだろ? ……木葉、お前の……」
圭斗の言葉は甘く心地よく、耳に溶けていく。
耳からジワリと広がる温かさは肩に回された圭斗の腕の熱と相まり、木葉の意識を溶かしていく。
……やがて。
かくん、と木葉の頭が傾いだ……。