蜜色トライアングル【完】



少しふらふらする足で、リビングの奥のキッチンへと向かう。

その途中。

突然横から伸びた手に腕を掴まれ、ものすごい勢いで引きずり寄せられた。

その勢いで脇の壁に背を打ちつけてしまう。


「ったぁ……」


護身術を習っていても、家の中では気が抜けているせいかとっさに反応できない。

木葉驚き、はっと顔を上げた。

視線の先にあったのは……。


「由弦?」


由弦は木葉を壁におしつけ、顔の両脇に手をついて逃げられないように囲む。

その怒りを纏った鋭い目に木葉は目を見開いた。


「どこ行ってたんだよ」

「え……」

「こんな、酒の匂いさせて……。こんな時間まで……」


抑えきれない怒りが、由弦の瞳の中に渦巻いている。

まるで木葉を狙い定め、食らいつくすかのようだ。


木葉の酔いが一気に吹き飛んだ。

――――この怒りようは尋常ではない。

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