蜜色トライアングル【完】



「ゆっ……ゆづ……っ!」


由弦に引き寄せられ、正面から抱き締められる。

その腕は力強く、身動きひとつできない。


「木葉は渡さない……誰にも。オレのものだ。オレが守る」

「……っ」

「認めない。オレ以外の男となんて、絶対に……っ」


由弦は抱き締めたまま、うわごとのように木葉の耳元で囁く。

木葉の体からはかすかに柑橘系の香りが漂い、それに気づいた由弦はますます強く木葉を抱きしめる。


「由弦……くるしっ……」


木葉は苦しさにもがくが、由弦には聞こえない様子だ。

頭と腰を押さえ込まれているため、身動きが取れない。


「こんな香り……。消してやる、オレが……」


由弦は木葉を抱いたまま、無理やり自室に引き込もうとする。

このまま連れられて入ってしまったら、一体どうなるのか……。

よく分からないが、とんでもなく恐ろしい事態になりそうな気がする。


< 113 / 222 >

この作品をシェア

pagetop