蜜色トライアングル【完】



木葉は必死にもがいた。

しかし護身術でどうにかしようとしても、ここまで抑え込まれていては手も足も出ない。

どうしよう、と青ざめ身を固くしたとき。


ひゅんと何かが飛ぶ音がし、バシッと由弦の頭を直撃した。


「何をしている」


見ると、廊下の端――――角部屋の前に、冬青が立っていた。

ワイシャツにスラックス、ペンをベストの胸ポケットに差したその格好から、仕事中だとわかる。

どうやら物差しをとっさに投げたらしい。

短刀術に長けた冬青の狙いは正確で、由弦のこめかみを強かに打った。


「ってぇ……」


ふらり、と由弦が身を離す。

木葉はすとんとその場に座り込んだ。

がくがくと足が震え、力が入らない。

衝撃のあまり視界が涙で滲んでいく。


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