蜜色トライアングル【完】
6.兄の優しさ
冬青は木葉をダイニングテーブルの椅子に座らせると、マグカップに牛乳を注いだ。
1分ほどレンジで温め、とんと木葉の前に置く。
「まずは飲め」
冬青はまるで命令するかのような事務的な口調で言う。
いつでも変わらぬ兄の冷静さに木葉は救われた気がした。
……この空気が今は心地よい。
木葉はマグカップを手にし、ゆっくりと一口含んだ。
「おいし……」
言葉に出すと、なぜか涙腺が緩んでくる。
木葉は慌てて目尻をぬぐった。
冬青はそんな木葉をじっと見つめ、冷静な声で言った。
「落ち着いたらでいい。……何があったのか、話せ」
「……」
木葉は先ほどの由弦とのことを思い出した。
病院でのことといい、今のことといい――――今の由弦は木葉には理解できない。
これまでの過保護な束縛とはまた違う感じがする。