蜜色トライアングル【完】
「私にも……わからないの」
「わからない?」
「私、知らないところで由弦を傷つけたのかもしれない。だからあんなに怒って……」
木葉は弱々しい声で続ける。
冬青は木葉の前に座り、木葉の頬に手を伸ばした。
指先で涙の跡をなぞるように、掌をすべらせる。
冬青は安心させるように少し笑った。
「心配するな。お前は悪くない」
「……え……」
「お前はいつも通りにしていればいい。お前が心を痛める必要はない」
冬青は頬を撫でながら暗示をかけるように静かに言う。
その瞳を見ているうちに、木葉はしだいに心が落ち着いてくるのを感じていた。
やはり兄には、人の心を動かす特殊な力があるらしい。
「由弦には明日、俺から話しておく。もし話が通じないときは……」
「……ときは?」