蜜色トライアングル【完】
「ねぇ、お兄ちゃん……」
「なんだ?」
「由弦は……何か言ってた?」
あれから。
由弦は徹底して木葉を避けるようになった。
目があってもすぐに由弦の方から逸らされてしまう。
だがその表情はとても辛そうで……。
嫌われているというよりは、由弦が必死に何かに耐えているようにも見える。
「俺からは、しばらくお前と距離を置けと言った。由弦もそうすると言っていた」
「……」
「まだあいつの中で整理ができてないんだろう。整理ができたら元に戻るはずだ。多分な」
由弦はGWの間、大学の特別講習に行くらしく、武術指導には参加しない。
花壱のバイトはこれまで通り続けるようだが……。
それらは全て冬青から聞いたことで、由弦からは何も聞いていない。
前は、真っ先に自分に教えてくれたのに……。
寂しさを感じるが、由弦の側で『整理がつく』までは、木葉は待つしかない。