蜜色トライアングル【完】

3.落武者俳優と女優




「ねぇ、君」


翌日の昼過ぎ。

現場で武術指導に当たっていた木葉は、後ろから声を掛けられ、振り返った。

そこに立っていたのはそこそこ背の高い、そこそこ顔立ちの整った青年だった。

そこそこと思ってしまうのは木葉が常日頃から超絶美形を見慣れているからで、一般的に見れば充分格好いいレベルの顔立ちに入るのだが。


「武内さん」


武内礼司。30歳前後の、落ち武者役の売れ筋俳優。

凛花の現在の追っかけターゲット。

木葉が武内に関して知っていることはそれくらいだ。


武内は時代劇の衣装を着込み、脇に刀を差している。

その姿は冬青の道着姿ほどではないが、端正でなかなか似合っている。


「木葉ちゃん……だっけ? 冬青くんの妹の」

「はい」


武内は木葉ににっこりと笑いかけた。

カッコよさのなかにもどこかあどけなさがある。

人懐こい感じの笑みは、確かに凛花が気に入るのもわかるような気がする。


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