蜜色トライアングル【完】
ふふっ、と馨は上品に笑う。
木葉はハハと乾いた笑いを浮かべた。
――――武術指導が主演男優を剣の錆にしたら、……相当、笑えない。
木葉は立って並ぶ二人の姿をまじまじと見た。
役柄だからというわけでもないが、二人が一緒にいる姿は一枚の絵のようだ。
木葉は昼休み、衣装担当の人からこっそり耳打ちされた話を思い出した。
『武内さんと小野寺さん、どうやら、付き合ってるらしいよ?』
『え。そうなんですか?』
『撮影中、空き時間とかあると二人でいること多いしね~。美男美女でお似合いよね』
木葉はあまりそういったゴシップに興味はないが、目の前の二人の姿を見ているとそんな気がしてくる。
このことを知ったら凛花はショックを受けるだろう。
それでも呼ぶべきだろうか?
後で圭斗に相談してみようと思った、その時。
「木葉!」
冬青の声が聞こえ、木葉は反射的にぴしっと背筋を伸ばした。
「竹刀を10本持って来い。あと短杖も3本だ」
「わかった!」
木葉は二人にぺこりと頭を下げ、転がるように駆け出した……。