蜜色トライアングル【完】



<side.馨>



木葉の姿が駐車場の方へと消えていく。

その姿を見ていた馨はくすりと笑った。


「かわいいわね、あの子」

「……」

「冬青さんの妹には見えないけど。花咲く前の膨らんだ蕾、って感じがするわ」


馨は目を細め、艶然と笑った。

その目は獲物を前にした白蛇のように、狡猾さと色っぽさが入り混じっている。

隣にいた武内が苦々しい目で馨を見た。


「……おい。剣の錆にされるのは、俺じゃなくてお前のほうじゃないか?」

「あら。何てこと言うの」

「あまり変なことはするなよ。……忠告はしたからな?」


武内は恋人らしからぬ冷ややかな声で言い、馨に背を向ける。

馨はその背には見向きもせず、木葉の去った方角をじっと見つめていた……。



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