蜜色トライアングル【完】
一時間後。
木葉は冬青に指示され、竹刀の片づけをしていた。
と、そのとき。
林の向こうに兄の姿を見つけ、木葉は眉を上げた。
「あれ、お兄ちゃん……」
声を掛けようとしたが、どうやら冬青は誰かと話しているらしい。
どうやら馨のようだ。
馨は艶やかな目で冬青を見上げ、珍しいことに冬青も口元に微笑を浮かべている。
冬青が誰かにあんな表情を向けることはめったにない。
木葉は驚き、思わずまじまじと見つめてしまった。
「……」
もしかして、冬青はああいう和服美人が好みなのだろうか?
確かに凛花や遥のような『イマドキの子』より、ああいう落ち着いた年上の女性の方が冬青には似合う気がする。
冬青ももう26だ、恋人がいてもおかしくない。
女性に興味がないわけでもないだろうし……。
……というか、興味の対象は女性であってほしい。
それは妹としての切実な願いだ。