蜜色トライアングル【完】



でももし兄が馨を気に入ったとしても、彼女には武内という恋人がいる。

……既に失恋決定だ。

いや、冬青なら相手に恋人がいたとしても全く気にしないかもしれない。

それだけの美貌と力、そして社会的地位はある。


「……っ……」


木葉はぎりっと唇をかみしめた。

……兄が馨と付き合うのを、あまり想像したくない。


父は入院し、由弦とは諍い中だ。

頼みの綱の兄まで遠ざかってしまったら、自分はどうすればよいのか……。

甘えだとわかっていても、寂しさに耐えられない。


この数か月でいろいろあって、自分の心は相当まいってしまっているのかもしれない。

兄に恋人ができたら喜ばなければならないのに……。


木葉は俯き、自分の手を見つめた。

今までこの手の中にあったものが、どんどん抜け落ちているような気がする。

いずれはこの寂しさに慣れなければならないのに……。

木葉は沈んだ心で片づけを続けた。


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